継続地代の鑑定評価(直近合意時点から経過年数がかなり短いケース)大阪府東部

継続地代の鑑定評価(直近合意時点から経過年数がかなり短いケース)大阪府

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

大阪市東部(東大阪市、八尾市、柏原市、門真市、枚方市、寝屋川市など)で継続地代の鑑定評価を行いました。

大阪府
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この案件は、直近合意時点から経過年数が短いケースでしたので、スライド法、利回り法という継続賃料(継続地代)を求める手法がほぼ横ばいとなり、差額配分法でしか、地代の値上げ余地を理論化しにくい案件でした。

 この案件では、駐車場等の運営の会社から、地主の隣接地の有効活用の提案が別途なされていたので、専門家として、その案件を引き受けることが適当かコメントさせて頂き、さらに、当該案件に係る将来的な底地買い取り等も踏まえ、シュミレーションも、気持ちでさせて頂きました。

駐車場の画像

直近合意時点(現行賃料を定めた時点)

以前は、「現行賃料を定めた時点」と言っていましたが、平成26年5月1日に改正された「不動産鑑定評価基準」において、「直近合意時点」という言い方が採用されました。

 直近合意時点については、継続賃料の鑑定評価において、直近合意時点から価格時点までの間に発生した事情変更等を基準に判断されるものですが、鑑定評価基準において明確に解説されていませんでした。

 2年前に初めて契約を締結して、今回、賃料の改定となったら、2年前の賃貸借契約を結んだ時点が直近合意時点ということで問題ないです。

しかし、最初の契約が4年前で、その後2年目で更新している場合は、これをどのように判断すべきかが論点となります。今回の鑑定評価は、このような判断に迷うケースではなかったのですが、このような場合、どのように考えるべきでしょうか。

更新の覚書がなされ、そこに賃料が記載されているのだから、直近合意時点は、2年前の契約更新時だという考えがあります。 一方、更新は形式的なもので、双方の合意があったのは、4年前の当初契約時まで遡るべきだという考えがあります。これらについては、以下の実務指針を参考にすべきです。

不動産鑑定評価基準に関する実務指針

賃料自動改定特約があり自動的に賃料改定がされている場合に、当該自動的に賃料が改定された時点を直近合意時点としている場合

賃料自動改定特約の設定を行った契約が適用された時点とすべき

不動産鑑定評価基準に関する実務指針

賃料改定等の現実の合意がないまま契約を更新している場合に、当該契約を更新した時点を直近合意時点としている場合

現実の合意があった賃料が適用された時点とすべき

不動産鑑定評価基準に関する実務指針

経済事情の変動等を考慮して賃貸借当事者が賃料改定しないことを現実に合意し、賃料が横ばいの場合に、当該横ばいの賃料を最初に合意した時点に遡って直近合意時点としている場合

賃料を改定しないことを合意した約定が適用された時点とすべき

不動産鑑定評価基準に関する実務指針

賃料増減請求について判断する際には、契約当事者間で現実に合意した時点(合意時点と合意した賃料が適用された時点に乖離がある場合は合意した賃料が適用された時点となる)が基準となる。

不動産鑑定評価基準に関する実務指針

賃料増減額交渉において、「直近合意時点」は重要な論点です。

賃料増減額請求権の発生の有無は、直近合意時点から価格時点までの事情変更を基準に判断されます。改正前の不動産鑑定評価基準では、直近合意時点に対応する概念が現行賃料を定めた時点とされていました。

更新の場合はどうなのか、横ばいだった場合はどうなのか、不動産鑑定評価基準に規定がなく、不動産鑑定士によって判断が異なっていましたが、上記、実務指針で、ある程度、標準化がなされたと考えます。

継続賃料の鑑定評価の見直し

現状における具体的な課題及び見直しの方向性

現行の基準は、土地や建物等の価格を求める評価を中心に規定されており、賃料に係る評 価についての規定は、必ずしも十分とはいえない。

特に、継続賃料の評価は、重視すべき期間や要因に特性があり、近年、借地借家法に係る 判例も蓄積されてきているが、実務における評価方法等に混乱が見られ、法曹実務家等か らも課題を指摘されていることから、評価において重視すべき期間や価格形成要因に係る 規定を見直す。

※ 継続賃料 不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正 に表示する賃料のこと

このため、判例等を踏まえ、「相当賃料」と「継続賃料」の関係性を整理し、継続賃料を求め る場合の一般的留意事項や、鑑定評価報告書の記載事項の拡充等に係る規定を整備す る。

不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案) 、平成25年6月24日

不動産鑑定評価基準等の見直し案の骨子

継続賃料を求める場合の一般的留意事項に係る規定の新設

継続賃料は、直近合意時点以降において、経済事情の変化等の事情変更が生じて いる場合に、当該事情変更のほか、賃貸借契約の内容や締結の経緯といった諸般の事情を総合的に考慮して査定する旨を明確化する。

不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案) 、平成25年6月24日

「直近合意時点」等についての規定の明確化

継続賃料の評価は、「直近合意時点」から「価格時点」までの期間に生じた事情変更 等をもとに行われるものであり、評価において重要な概念であるが、現行の基準では 明確にされていないため、「直近合意時点」に係る定義を「現行賃料について合意し 適用した時点」として明確に規定する。

あわせて、賃料改定の基準時点となる「価格時点」の把握の仕方を明確化する。

不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案) 、平成25年6月24日

継続賃料固有の価格形成要因の明確化

継続賃料固有の次の価格形成要因について内容を明確化するとともに、賃料評価の4手法(差額配分法、利回り法、スライド法及び賃貸事例比較法)において考慮すべ き事項を追記する。

事情変更: 直近合意時点から価格時点までに変動した要因

諸般の事情: 契約締結の経緯、契約内容等に係る要因

不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案) 、平成25年6月24日

鑑定評価報告書の記載事項の拡充

継続賃料固有の事項について、鑑定評価報告書に明記されるよう新たに規定する。

不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案) 、平成25年6月24日

不動産鑑定評価基準:継続賃料の鑑定評価

第2章 賃料に関する鑑定評価

第1節 宅地

継続賃料固有の価格形成要因は、直近合意時点から価格時点までの期間におけ る要因が中心となるが、主なものを例示すれば、次のとおりである。

(1)近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における宅地の賃料又は同一需 給圏内の代替競争不動産の賃料の推移及びその改定の程度

(2)土地価格の推移

(3)公租公課の推移

(4)契約の内容及びそれに関する経緯

(5)賃貸人等又は賃借人等の近隣地域の発展に対する寄与度

継続中の宅地の賃貸借等の契約に基づく実際支払賃料を改定する場合の鑑定評価額は、差額配分法による賃料、利回り法による賃料、スライド法による賃料及び比準賃料を関連づけて決定するものとする。 この場合においては、直近合意時点から価格時点までの期間を中心に、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。

(1)近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における宅地の賃料又は同一需 給圏内の代替競争不動産の賃料、その改定の程度及びそれらの推移

(2)土地価格の推移

(3)賃料に占める純賃料の推移

(4)底地に対する利回りの推移

(5)公租公課の推移

(6)直近合意時点及び価格時点における新規賃料と現行賃料の乖離の程度

(7)契約の内容及びそれに関する経緯

(8)契約上の経過期間及び直近合意時点から価格時点までの経過期間

(9)賃料改定の経緯

なお、賃料の改定が契約期間の満了に伴う更新又は借地権の第三者への譲渡を 契機とする場合において、更新料又は名義書替料が支払われるときは、これらの 額を総合的に勘案して求めるものとする。 契約上の条件又は使用目的が変更されることに伴い賃料を改定する場合の鑑定 評価に当たっては、契約上の条件又は使用目的の変更に伴う宅地及び地上建物の 経済価値の増分のうち適切な部分に即応する賃料を前記2.を想定した場合にお ける賃料に加算して決定するものとする。

この場合においては、前記に掲げる事項のほか、特に次に掲げる事項を総 合的に勘案するものとする。

(1)賃貸借等の態様

(2)契約上の条件又は使用目的の変更内容

(3)条件変更承諾料又は増改築承諾料が支払われるときはこれらの額

不動産鑑定評価基準、国土交通省
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